バルブクリアランスを調整する(タペット調整)

  • 2018.11.09 Friday
  • 22:35

タペットを調整してバルブクリアランス適正値か否か確認します。

 

エンジンの燃焼室で吸気・排気を制御する部品がバルブです。燃焼室の上下(左右)でバルブが開放と閉鎖を繰り返すことで、混合気が燃焼室へ取り込まれ、燃焼後の排気ガスが排気されます。吸気側のバルブをインテークバルブ、排気側のバルブをエキゾーストバルブと呼びます。

 

このバルブを適切に開放しなければ当然吸気排気が思うようにいきません。バルブはタペットによって叩かれることで開放されます。タペットとは英:tappetのことで叩くもの(凸子)を意味します。スマホをタップして下さい、なんて表現をよく見ますが、これも英:tapで軽く叩くという意味です。

 

タペットとバルブの間には熱膨張を考慮してクリアランス(隙間)が設けられています。これをバルブクリアランスと呼びます。このバルブクリアランスを適正値に調整しよう、というのが今回の内容ひいてはタペット調整が指すところとなります。

 

エンジンが冷間時に行います。

 

スーパーカブ タペット 調整

 

今回からいよいよシリンダーヘッドに突入します!

 

 

過去記事:外装の外し方

過去記事:エアクリーナーとインシュレータの外し方

エアクリーナーの分解と点検方法

 

シリンダーヘッドはもう立派なエンジンの一部です。いきなり突入は出来ません!

 

まずは前段階としてエアクリーナーとインシュレータまで外します。外し方については過去記事を参考にして下さい。

 

スーパーカブ AA04 シリンダーヘッド

 

シリンダーヘッドはインシュレータとマフラーが接続されたこの部分です。正面に見えるサイドカバーと上下のタペットカバーの計三つを外しましょう。ボルトは全て同じなので、位置は覚えずとも大丈夫です。Oリングが使用されているので、落とさないように注意して下さい。

 

いや、外装すら半分しか外してないじゃん、と思うかもしれませんが、これは写真を撮り忘れて後日撮ったからです!

 

スーパーカブ AA04 カムスプロケット カムチェーン

 

サイドカバーを外せば、カムスプロケットカムチェーンが見えます。カムスプロケットは奥のカムシャフトに固定されていて、同時に回転します。カムチェーンはクランクシャフトの回転と連動し、クランクシャフトはピストンの上下運動を回転運動に変換しています。

 

今回はカムスプロケットはこのまま弄りません。

 

上部のタペットカバーを外せば、トップ画像でもあるIN側(吸気側、インテーク側)のタペット、下部を外せばEX側(排気側、エキゾースト側)のタペットが見えます。

 

二つ上の写真を見てみると、IN側のタペットにほぼスペースがないのが分かります。エアクリーナーやインシュレータをどかさないと、窮屈でとても調整できたものじゃありません。実はこの部分がAA04とJA10で違いがあり、JA10はシリンダーヘッドの前半分を丸ごと外すような構造のため、エアクリーナーやインシュレータをどかさずともスペースに余裕があります。

 

スーパーカブ AA04 AA09 タペット調整

 

タペットカバーを外す際に、上のIN側は特に問題ありませんが、下のEX側には注意して下さい。もうここはエンジンの機関部ですからエンジンオイルが循環しています。何の用意もなくEX側を開けるとドバっと少量溜まったオイルがこぼれ出してきて驚きます。(実体験)

 

あらかじめオイル受けを用意したり、何でも良いのでウエスを当てたりしながら外します。前輪側に木片などを挟んだりしてシリンダーヘッド側を持ち上げる方法もありますが、結構な角度を付けないと結局オイルはこぼれ落ちます。タペットカバーを外すときには平地のままやった方がオイルの処理もやりやすいです。

 

 

Lクランクケース側(シフトぺダル側)にある二つのホールキャップを外します。ここは6mmと10mmの六角(HEX:ヘックス)ソケットが必要です。前に買ったトルクレンチに付属していたので助かりました。

 

ここもOリングが使われているので、外すときに落とさないように注意です。

 

 

ん? Oリングなんてどこにもないぞ? 大抵張り付いています。

 

奥の方にフライホイールナットが見えます。

 

 

14mmのソケットでフライホイールナットを反時計回りに回します。この作業はTハンドルを使うのがおすすめです。フライホイールもクランクシャフトと連動するので、カムチェーンを通じてカムスプロケットも回ります。

 

タペット8.JPG

 

そうして、上の穴の切り欠きとフライホイールのTマークを合わせます。フライホイールは結構勢い良く回りますが、ぴったり合わせましょう。

 

スーパーカブ AA04 AA09 JAA10 JA44 カムスプロケット

 

このとき、カムスプロケットの爪とシリンダーヘッドの切り欠きが延長線上に来るようにします。ただ、これはあまり厳密なものではなく、本当にぴったりと一致するわけではなさそうです。ほんの僅かにずれていても、見る角度の問題として許容範囲内でしょう。大事なのはフライホイールのTマークの位置が合っていることです。今回はフライホイールナットを回すだけなので、自然と位置が決まると思います。

 

Tマークの位置を合わせただけでは正位置になるとは限りません。ピストンが一番上に達したときを上死点、一番下に達したときを下死点と呼び、バルブクリアランスの調整では前者の上死点の位置に合わせなければなりません。Tマークはピストンが一番上に達したときに一致しますが、上死点には圧縮上死点と排気上死点の二つがあります。そして、Tマークとカムスプロケットの爪の位置が合ったときが圧縮上死点です。圧縮上死点ではタペット(正確にはロッカーアーム)に遊びがありますが、排気上死点(カムスプロケットの爪がちょうど切り欠きの反対側にあるとき)では遊びが無いことが分かります。これは、同じ上死点でも排気上死点ではバルブが押されているからで、ドライブチェーンの調整のときと同じく、まずは測定する基準点を定めなければ意味が無いわけです。

 

 

専用工具のタペットアジャストレンチとシックネスゲージを使います。タペットとバルブステムとの間には僅かに隙間があり、ここがバルブクリアランスです。ここにシックネスゲージを挟み、バルブクリアランスを測定します。

 

バルブクリアランス規定値はIN/EXどちらも0.12±0.02mmです。

 

タペットアジャストレンチは何やら不思議な工具ですが、ロックナットを付属の9mmソケットで緩め、つまみをダイヤルのように回します。右回りでクリアランスが狭まり、左回りで広まります。

 

スーパーカブ バルブクリアランス

 

EX側のタペットは姿勢がツラくなるので、初めてやる場合は木片などを前輪に挟んで車体をやや持ち上げるとやりやすくなります。ただし、前輪がずり落ちないように注意!

 

調整が終わったらロックナットを締め、シックネスゲージを引き抜いてその抵抗具合でクリアランス確認します。このシックネスゲージを引き抜く力加減というのがタペット調整における最大の課題となります。するりと抜けるようでは緩すぎで、引っ張っても全く抜けそうになければきつすぎです。

 

抵抗を感じながらも、力を入れれば引き抜けるような、とても感覚的なものが要ります。何度かシックネスゲージを出し入れして確認しますが、角度によっても抵抗が変わってしまうので訳が分からなくなります。

 

上手くできたとなったら、カムスプロケットを一回転させて定位置にしたら、再び測定します。またここで緩すぎたりきつすぎたりするとやり直しです。この確認作業をサボらないようにして下さい。

 

・・・。

 

・・・・・・。

 

ああああああああああ!!!!

 

緩すぎると思ったらきつすぎる! きつすぎると思ったら緩すぎる!

 

時間だけがただただ過ぎて行きました。もうこのあたりに必要なのは根気です。

 

ぐっと力を入れればシックネスゲージが抜き差しできるようにします。ぐっですよ。ぐっ。これ以上説明の仕様が無いです・・・。

 

そんなこんなで、こんなもんだろ、と納得できたら組み立てましょう。

 

スーパーカブ AA04 サイドカバー タペット 向き

 

タペットカバーやサイドカバーには向きがあります。サイドカバーはパーツの刻印がある方が上でした。逆だとボルトの位置が合いません。タペットカバーもIN、EXと刻印が打たれている方が車体後ろに向くようにします。ボルトの締め付けトルクは全て12N・mです。

 

Lクランクケースカバーのホールキャップは上が10N・m、下が8N・mです。締め過ぎるとOリングがねじ切れる位置なので、トルクレンチ推奨です。

 

外装を付ける前にエンジンを始動させて確認しましょう。

 

タペット調整は慣れない内は一発で決めるのはかなり難しいです。力加減が感覚的なものなので「よーし、ばっちりできた」と思ったのに、調整前より音がうるさくなったりもします。初めてやったときはめちゃくちゃ苦戦しました。

 

経験上、調整失敗の原因はクリアランスが広すぎる場合がほとんどです。「ちょっと狭すぎるかも?」と思うぐらいがちょうど良いです。ワンサイズ小さいシックネスゲージで調整した後で、正規のサイズで確認するのも手の一つです。(実は写真でも0.10mmを使っています。)

 

バルブクリアランスが広すぎるときは、アイドリングの時点でカチカチ(カタカタ)とタペット音がはっきりと聞こえます。あらら、そうなったら残念ながらもう一回調整しましょう。

 

問題無いようでしたら外装を組み立てて終了です。お疲れさまでした!

 

 

 

タペットの正体はロッカーアーム(ロックナットの締め付け土台となっている部分)に備え付けられたアジャストスクリューです。タペットアジャストレンチでつまみを回したのは、結局ねじを締める緩めると全く同じだったんですね。

 

またロックナットの締め付けが緩いとすぐにまたバルブクリアランスが広がってしまうので、しっかり締めましょう。一応締め付けトルクは9N・mと指定されているので、ぐぐって感じですね。ぐぐっ。バルブクリアランスが摩耗やロックナットの緩みで広がることはあっても、逆に狭まることは無いはずです。

 

バルブクリアランスが狭すぎると、タペットとバルブステムが常時接してしまい閉鎖不良になります。逆に広すぎると、余分なクリアランス分だけバルブステムが押されず、開放不良になります。どちらも性能の低下を招きますが、そこまでバルブクリアランスが"外れる"ことはあまり無いと思います。

 

タペット調整をするときの大抵の理由は、カチカチ(カタカタ)のタペット音ではないでしょうか。

 

アイドリング時にカチカチ(カタカタ)と音が気になるようになったら、バルブクリアランスが広がっている症状です。タペットとバルブステムの距離が広がることで、打音がするようになっているのです。

 

タペットは異音の原因に成り得ます。交換の必要はなく調整するだけなので、これで異音が納まったらラッキーです。

 

 

今回使ったもの

STRAIGHT タペットアジャストレンチ

Garage.com シックネスゲージ 25pcs

miniT型レンチソケットセット 8pcs

BIKE HAND コンパクトトルクレンチ 差込角6.35mm

 

■メガネレンチが不要なタイプ

キタコ タペットアジャストレンチ

 

 

JUGEMテーマ:車/バイク

コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

  • 新型スーパーカブ(AA09)に二十万越えの価値はあるのか
    off (10/18)

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM